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コラム:ストレスレスな旅「美しい海と山、祈りの街に心惹かれる宝島、天草」

コラム:ストレスレスな旅「美しい海と山、祈りの街に心惹かれる宝島、天草」

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家でお気に入りのモノに囲まれ、心地よい空間を作ることは、日常生活においてストレスレスになる近道ですが、
時に非日常な環境でストレスレスになる方法と言えば、断然「旅」でしょう。見知らぬ土地に行き、美しい景色やローカルの食、そこで暮らす人々やカルチャーに触れたり、体験すること―――「旅」は、心地よい解放感と非日常の世界での経験を与えてくれるとともに、新しい自分に気づいたり、何かを生み出したりするきっかけも与えてくれます。ここでは、そんないつか行ってみたい、極上のストレスレスな「旅」や旅を通じてできる「体験」をご紹介します。

Text & Photo: Kazumi Serizawa Edit: F.M.J. magazine

野生のイルカが安心して暮らす美しい海

熊本県にある天草は、大小120あまりの島々からなる諸島。人口が集中する大きな島は上島とその西にある下島の2つで、上島は九州本土と5つの橋「天草五橋」で結ばれています。

上島と下島の間には狭い海峡があるものの、橋で繋がっているので、ひとつの大きな島のような感覚。天草と聞くと、なんとなく「遠くにある小さな島」というイメージもありますが、想像以上に大きく、そして、それぞれのエリアに美しい自然が息づいています。

初めて訪れたときから虜になり、もう何度も訪れている天草ですが、なにより心を惹き付けるのは、海の美しさと豊かさ。天草は有明海、八代海、東シナ海という3つの海に囲まれ、変化に富んだビーチの風景を見ることができるのです。しかも、どの海も透明度が高くて、沿岸をドライブ中は何度も車を止めたくなってしまいます。

この海を気に入って棲みついているのが、野生のイルカたち。長崎県の島原半島との間に挟まれた海域は栄養が豊かなうえに、気候も温暖。下島から橋で渡れる通詞島の沖合には、200頭ものミナミハンドウイルカが一年中、群れをなして泳いでいます。

イルカとの遭遇率98%を誇るここでは、船上からのイルカウォッチングも人気です。天草らしさが表れているのが、イルカたちの人懐っこさ。彼らは、船の下を行ったり来たりしたり、水面にひょっこり顔をだしたりと、船を警戒することもなく、目の前まで寄ってきます。通詞島では、昔から定置網など大規模な漁法に頼ることなく、一本釣りや素潜りで漁が行われきたため、野生のイルカが船を恐れず、安心して生息しているのだそう。

同時に、素もぐりの漁師たちにとっても、イルカは安心して漁ができるありがたい存在だといいます。群れを作って行動するイルカたちがいるかぎり、サメが沖に近寄ることはないからです。「あのイルカは先週、子供を産んだんだよ」。漁師から聞くそんな言葉に、自然と共生するこの地の優しさと豊かさが伺えます。

清々しい山の緑と静かな入江の集落に心癒される

天草は海だけにとどまらず、山もまた、魅力がいっぱいです。緑豊かな山で野草を摘み、それを料理して食べたり、トレッキングコースを歩いたり、パラグライダーを体験したり、オリーブ園を訪ねたりと、楽しみは尽きません。

下島の深い緑の中にある「石山離宮 五足のくつ」は、天草=海というステレオタイプのイメージをくつがえすスモールラグジュアリー。全室露天風呂付きのヴィラ15棟が山の中腹に点在しています。このホテルの魅力は、自然環境やラグジュアリー感だけではありません。16世紀にポルトガルの船が来航し、南蛮文化が花開いた天草ならではのドラマティックな歴史を、インテリアの随所に表現しているのです。

「五足のくつ」という名前は、1907年に、与謝野鉄幹や北原白秋など5人の詩人が、九州を旅して天草のフレデリック・ガルニエ神父を訪ねた紀行文『五足の靴』に由来しています。ネーミングといい、空間といい、天草を存分に感じられるこのホテルでの時間は、旅をさらに豊かなものにしてくれます。

ここから車で20分ほどのところにあるのが、美しい羊角湾の入江にある﨑津地区。16世紀にポルトガル人宣教師、ルイス・デ・アルメイダが布教活動を行ったこの場所は、江戸時代の長いキリスト教禁教令という時を経て、今もクリスチャンが多く住み、信仰の暮らしが息づいています。

小さな漁港を中心に、細い路地に民家が連なる﨑津地区を見守るのは、﨑津天主堂。堂内に入れば、畳敷きの中にある美しい祭壇に目を奪われます。天主堂の周りに広がるのは、時が止まってしまったかのような、牧歌的な風景。家々の間に張り巡らされた細い路地、家から海に張り出しているテラス、路地で猫が堂々と寝そべる住宅街……。ここを歩くたび、温かな空気に包まれます。

﨑津集落からほど近い丘の上にある大江天主堂は、1892年に天草に赴任し、天草の教徒と同じ質素な暮らしをしながら宣教活動に励んだガルニエ神父が私財を投じて建てた教会。﨑津天主堂が「海の教会」と呼ばれるのに対して、大江天主堂は「山の教会」と呼ばれ愛されています。日曜朝は、ミサに集まる人々で賑わいます。

山や海などの自然、そして村に立つ小さな教会。それらが融合して美しい風景を見せる天草は、宝島と呼びたくなる素晴らしい場所。絶景が果てしなくこの街を旅するのなら、夕暮れどきの海も、ぜひ目に焼き付けて。天草西海岸には、東シナ海に沈む夕陽が感動的な絶景スポットが多く点在しています。そんな光景を見れば、ゆったりと旅情に浸れるはずです。

旅行ライター/芹澤和美(せりざわ・かずみ)_編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
旅行ライター/芹澤和美(せりざわ・かずみ)_編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
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