stressless® Moment(ストレスレス® モーメント)

コラム:ストレスレスな旅「音楽と笑顔にあふれたカリブの街、ハバナ」

コラム:ストレスレスな旅「音楽と笑顔にあふれたカリブの街、ハバナ」

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家でお気に入りのモノに囲まれ、心地よい空間を作ることは、日常生活においてストレスレスになる近道ですが、時に非日常な環境でストレスレスになる方法と言えば、断然「旅」でしょう。見知らぬ土地に行き、美しい景色やローカルの食、そこで暮らす人々やカルチャーに触れたり、体験すること―――「旅」は、心地よい解放感と非日常の世界での経験を与えてくれるとともに、新しい自分に気づいたり、何かを生み出したりするきっかけも与えてくれます。ここでは、そんないつか行ってみたい、極上のストレスレスな「旅」や旅を通じてできる「体験」をご紹介します。

Text & Photo: Kazumi Serizawa Edit: F.M.J. magazine

旅情を誘うクラシカルな街並み

色彩豊かな建物を照らす太陽、ラム酒をたっぷり使ったモヒート、ほろ酔いでついウトウトする寝耳に心地いいサルサのリズム……。キューバの首都ハバナは、いつ訪れても旅情に酔わせてくれる街。そして、人間らしい生き方のヒントを教えてくれる場所でもあります。

16世紀初頭、港を中心に都市が築かれたこの街は、スペインの植民地下で大繁栄しました。時は移り変わり、今。50年以上も続いたアメリカの経済封鎖の影響で物は不足し、他国の首都には当たり前のようにあるファストフードも、カフェのチェーン店も、外資系ブランドの広告も見当たりません。でも、そんな時代遅れにも見える風景もまた凜として美しく、サルサのリズムには心が躍らされてしまうのです。

この街の象徴といえば、青空の下で映えるカラフルな建物とクラシックカーでしょう。コロニアルカラーの壁と高い天井を持つ風情ある建物は、1959年のキューバ革命以前に建てられたもの。修繕がほとんど施されていないため少々くたびれてはいるのですが、それがむしろノスタルジックな情緒をかもし出しています。そんな建物の間を縦横無尽に走るのは、修理を繰り返しつつも現役を誇る1940~50年代製のアメリカ車。古いけれど慕情に包まれるそんな風景が、いたるところに広がっています。

海沿いに延びるのはマレコン通り。道路と海を隔てる防波堤は古く、少しでも海が荒れると道路は簡単に波をかぶってしまうのですが、おかまいなしとばかりに、リズミカルな音楽を響かせながらクラシックカーが走っていく風景もまた、絵になります。

ハバナは道行く人もファッショナブル。けっして流行を追いかけているのではなく、老いも若きも自分らしい着こなしを楽しんでいる様子は、とても素敵です。時間も日本人の感覚とはちょっと違っていて、お店や両替所ではかなり待たされますが、待つほうもイライラすることなく、その時間を楽しんでいるのはさすが。おおらかさと余裕はうらやましくなるほどです。

哀愁漂うコロニアルな街に迷い込む

ペパーミントグリーンやリームイエロー、サーモンピンク……。中心地のオビスポ通りを歩いていると、次々とカラフルな建物が目に飛び込んできます。建物はまるで一定の法則をもっているかのように、隣同士が同じ色になることなく絶妙なコントラストを描いていて、街歩きは飽きることがありません。

オビスポ通りから一歩路地裏に入れば、そこは日常が息づく住宅街。軒先でハンチング帽を被った男性が葉巻をくゆらせていたり、子どもたちが無邪気にダンスをしていたりと、ゆったりとした時間が流れています。ふと頭上を見上げれば、家のベランダに鮮やかな南国の花が咲いていたり、壁の色に負けないぐらいカラフルな洗濯物が干されていることも。探検気分で散策すると、いつしか古き良き時代にタイムスリップしてしまいます。

ノスタルジックな旧市街から新市街へ足を延ばすと、街並みはがらりと変わります。政府機関の建物が集まる殺風景な一角で存在感を放っているのは、内務省の壁に描かれたチェ・ゲバラの肖像画。少し離れて隣に立つ情報通信局の壁に描かれているのは、ゲバラやフィデル・カストロとともにキューバ革命を戦った英雄、カミロ・シエンフゴス。生きる底力とカリブの熱風を感じる旧市街とは対照的に、遠くを見つめるような英雄の眼差しもまた、ハバナを印象づける風景のひとつとなっています。

物はないけれど街はキラキラと輝いていて、老若男女がお洒落をしていて、どこにいても音楽が聞こえて、冷えたモヒートがとびきりおいしいハバナ。2015年にアメリカとキューバの国交が54年ぶりに回復したことにより、街の風景も今後は変わっていくことでしょう。でも、行くたびに私を励ましてくれた人々の笑顔や街のエネルギーは、失わないでほしい。そう願わずにいられません。

旅行ライター/芹澤和美(せりざわ・かずみ)_編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
旅行ライター/芹澤和美(せりざわ・かずみ)_編集職を経て、1996年、中国・上海へ短期留学。帰国後、フリーランスの旅行ライターとして活動。主なフィールドは、98年から通い続けているマカオや、中国語圏、アジア、中米、南アフリカ。主に、旅行雑誌やカード会員誌、機内誌、新聞などで国内外の旅行記事や紀行文を掲載。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
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